菌の物語
3月3日はひなまつりの日。「あかりをつけましょぼんぼりに…」で始まるひな祭りの歌には、「白酒」で顔を赤く染めた右大臣が出てきます。昔から、ひな祭りには「白酒」が欠かせないものでした。白酒は、みりんや焼酎などに蒸したもち米や米麹を仕込み、1ヶ月程度熟成させたもろみを、軽くすり潰して造った酒のことをいいます。
もともとは桃の花を酒に浸した「桃花酒」を飲む風習がありました。これは、桃が百歳を表す「百歳」に通じることから、桃は邪気を祓い、気力や体力の充実をもたらすということで、薬酒のひとつとして中国から伝えられていたのです。江戸時代からは、みりんに蒸した米や麹を混ぜて1カ月ほど熟成させた「白酒」の方が親しまれるようになりました。
そもそもひなまつりは、中国の厄を祓うための行事でした。この厄祓いは、水で身体を清めて桃の花びらを浮かべたお酒を飲むというものでした。特に中国では、桃は理想郷に咲く祝いの花であり、不老不死の薬とも考えられていたため、この日に桃のお酒を飲んで祝うという風習があったのです。ひなまつりにひな人形を飾る風習も、身に降りかかる災いを代わりに受けとめるという役割があります。そして、ひなまつりに発酵飲料である「白酒」を飲む習慣も、女の子の健やかな成長を願った特別な意味があったのです。