社長ご挨拶 創業を想う
私は人間の生命の根源を支えるエネルギーの理論を「絶対負の思想」と名付けて研究に邁進して来た。その、思想を支える生命と肉体を築き上げる物理作用として、菌酵素研究から生まれた「菌食の理論」を展開して来たのだ。私は、この絶対負と菌食の文化に寄与するためにこの事業を創業した。そこに私の残る生命のすべてをより強く捧げ尽くさなければならない。そうしなければ、この新工場の魂が泣くに違いない。私の生命をこの新工場の霊魂として捧げなければならないと思っている。そうすることが、この事業の発展につながり、また事業の発展が、必ずや他者や日本国のためになれると私は信じているからだ。私は今後、いかに老化し衰弱しようとも私が与えられたこの生命とその使命に全力を投入する覚悟である。私は死ぬまで絶対負の思想を生き抜く決意をここに表明したいのだ。私は、この事業を創業したひとりの日本男子として、死ぬまで私の確立した思想と事業にこの生命を捧げ尽くすことをいま一度、自己に確認しているのだ。
いま、そのために私は敬愛する革命の詩人、今は亡きあの田村隆一と全精力を使って「対話」をしているのである。私は詩人の魂を受け入れながら考え続けている。そして、今後の自分を再び創業の志の本源の中に投げ入れようとしているのだ。そのためにはまず、「私は幸福を求めない」。私は死ぬまでそうする所存だ。だからこそ私は幸福の本質がわかるのだと考えている。そのことはそのまま、この事業の根底を築くだろう。次に「私は成功を求めない」。だからこそ、私は他者の成功を本源的に、心の底から喜べる人間に至れると思っている。
第三に「私は愛を求めない」。自分への愛を本当に捨てなければ、他者と国を本当に愛することは出来ないのではないか。私はそう思うのだ。そして第四に「私は休息を求めない」。自分の生命を死ぬ日まで「創業の志」に捧げ続けるのが私の使命である。多分、死が本当の休息になるだろう。五番目として「私は健康長寿を求めない」。これは自己のエゴイズムを戒めるための思想だ。それをおさえることによって、私は他者と国に何ものかを返せるのではないか。そう思う。最後に第六番目として「私は権利を求めない」。保障と権利そして安定が私の生命を弱くしている。それを捨て尽くして全てを他者と国家に捧げなければならない。
私は、自己の生命が燃え尽きるまで、そう生きることを自己に誓った。その誓いをこの祝いの日に改めて公言しておきたいと思う。そしてこの誓いが、この新工場の霊魂となりますように。私はそう祈っている。田村隆一の言葉が、私の創業の志に対していま降り注いで来る。「人間が死ぬことのできない世界は、生きることもできない」。そう詩人が私に言うのだ。私もそう思う。我が事業は、人間が本当に生きるための世の中を創るためにある。つまり、本当に死ぬことの出来る世の中ということである。そして詩人は続ける。「地上には我々の墓がない 地上には我々を入れる墓がない」という叫び声を上げているのだ。詩人は今の世をそう表現している。
私と詩人は、二人一緒に、生命の本源のために、自己の生命を捧げ尽くすことを語り合った。私はこの邂逅が嬉しくてたまらないのだ。それをいま、みなに伝えたい。私は創業の志を、いま再び固めている。それは「人間が正しく死ぬための墓標となることが、我が事業の目的なのだ」という信念である。私は創業三十五年の総決算として、この事業をそう定義したい。私の思想は、人間が正しく死ぬための思想だと思っている。そして、菌食の事業はそのように生きる肉体を創り上げる方法論なのだ。この事業は、人間の生命が生む墓標である。
新工場竣工を記念して「創業を想う」(平成29年11月10日)挨拶より抜粋