菌の物語

第10巻
第6話環境ホルモンの恐ろしさ
-犠牲になった動物たちと私たちの未来-

1997年、米国で話題となった『奪われし未来(Our Stolen Future)』(シーア・コルボーン他、著)の邦訳が日本で発売されました。その内容は、“我々がよく知っている農薬などの環境ホルモンにより、生殖というシステムが壊れようとしている。野生生物などの生態系を狂わせ、将来的には人類が子孫を残せなくなるかもしれない”という衝撃的なもので、当時日本でも話題になりました。

環境ホルモンとは、正式には「内分泌攪乱物質」といい、いくつかの有機塩素化合物やプラスチック分解物など、人体から分泌されるホルモンに類似した作用を持つ合成化学物質を指します。主な環境ホルモンとしては、ダイオキシン、PCB(ポリ塩化ビフェニール)、DDT、有機スズ化合物、ビスフェノールAなどがありますが、これらの環境ホルモンの問題点は、生物のホルモンの働きを攪乱することで、“生殖機能に異常をもたらす”点です。20年ほど前にイギリスで雌雄同体(オスとメスの両方の機能を持つ)の鯉が多数発見され、のちの調査により、近くの工場から排出された「ノニフェノール」という化学物質が原因のひとつとして指摘されました。この他にも、精巣が小さい鯉、孵化しないワニやカモメの卵、メスなのにオスの生殖器がついているイボニシ(巻き貝の一種)など、世界各国でも多数の異常が報告されたのです。

一方で人体においても残留性が高く、発がん性、皮膚疾患、視力障害や肝臓障害等があるとされています。また、女性の不妊症をはじめとする生殖機能の異常とともに注目されているのが、精子数減少を含めた男性不妊です。さらには、精巣腫瘍、尿道下裂、精巣下降不全などの男性生殖器の発生異常の増加も報告され、これらによる男性不妊についても論議されています。現在では製造・輸入・新たな使用は禁止されていますが、「PCB」は、日本だけでも累積使用量が6万tもあり、今尚2~3万tが回収不能となっています。

人間の体内で作られる「ホルモン」は必要な時に必要な量が分泌されます。このホルモンは、一生涯のうちにわずかティースプーン1杯(約5g)ほどしか分泌されません。仮に80歳まで生きても、1日たったの0.00017gしか分泌されないのです。体内でそれしか分泌されないのに、体外から環境ホルモンという人間のホルモンに似た物質が入ってくることにより、本物のホルモンの働きが乱れるのです。さらに、環境ホルモンの恐ろしさは、超微量で毒性を引き起こす点です。例えると、学校の25mプールに一滴の液体を落としたぐらいの量、もしくは甲子園球場に水を満たして1個の角砂糖を入れたぐらいの量で、生体のホルモンバランスが乱れると言われています。25mプールにたった一滴の液体でも、なんと1cc中に約20億個の環境ホルモン分子が存在していることになるのです。

このように書くと怖いように感じますが、かといって避けきれないのも事実。汚染された中に於いても逃げの姿勢ではなく、積極的に生きることが真の健康を生むのです。そのためには、体の排泄機能(肝臓の機能)を高めることが必須となります。良質な菌食をとることは、自力を高めるだけでなく、解毒力を高めることにも繋がります。私たちが食べたもので、内臓をはじめとする60兆個の細胞が作られるのです。