菌の物語
森の代表格であるキノコですが、皆さん砂浜に生えるキノコをご存じですか?あまりにも場違いなその姿は、まるで忘れられたビーチパラソルのようでとても可愛らしい形をしています。そのキノコの名は、「スナハマガマノホタケ」。普通、キノコは植物の種子にあたる胞子を風に飛ばして繁殖します。そして、落ち葉をエサに数ミリの小さく丸い菌核を作ります。それが春に土に埋もれて、夏を乗り切り、秋に私たちのよく知る、あの“かさ”を出すのです。
砂浜に生える「ガマノホタケ」も、胞子を風に飛ばして繁殖するのですが、森ではなく、砂浜に埋まるのが特徴です。砂浜に埋まることにより、夏の台風や、冬の爆弾低気圧、大しけなどに耐えなければなりません。ガマノホタケの菌核は、荒波にのまれ、もみくちゃにされながらも、しぶとくその波に乗って、去年とは違う場所にキノコを出します。大きな攪乱を受ける砂浜の環境に賢く適応し、大波にさらわれながらも、再び砂の上に這い上がる「ガマノホタケ」。その生命力を私たちも見習いたいものです。