菌の物語
「音楽療法」という言葉があるように、人は音楽を聴くことによって、心身の健康維持や改善、リラックス効果を得る事ができます。このような音楽の影響は人にだけでなく、農作物や動物にも良い効果をもたらすと言われています。例えば、松阪牛にモーツァルトを聴かせると、リラックスして肉質が柔らかくなる、乳牛に聴かせると、お乳の出が良くなる、トマトに聴かせたら糖度が増す…など、さまざまな事例があります。実はこの効果が菌にも有効だということを皆さんご存じでしょうか。
酒蔵業界では、「酒麹にクラシック音楽を聴かせる」という「音楽仕込み」をしている所が多くあります。ワイン造りの際に、酵母菌にクラシック音楽を聴かせたところ、酵母菌の働きが活発になり、発酵がより早く進むことがわかりました。さらに、1日置きにワインの温度と糖度を測定した結果、音楽を聴かせた方が5日後の糖度が低く、温度が高い傾向にありました。また、発酵にかかる時間も2日間短縮されたそうです。ワインの糖度の低さは、酵母が糖からアルコールを生成する発酵の反応がより進んでいること、温度の高さは酵母の活動が活発であることを示しています。まだ科学的には証明されていませんが、音楽を聴かせる=音が振動して伝わることで、水分子が小さくなり、水分子間の空気が減ることが、酵母の活発さにも影響したものだと考えられています。
このように、美しい調べは人の心を豊かにするだけでなく、菌にも良い影響を与えるのです。