菌の物語

第10巻
第2話実はあの食品も発酵食品なんです

発酵食品といえば、パンやみそ、納豆、チーズ、ヨーグルト、キムチなど、世界中に沢山ありますが、「チョコレート」も発酵食品であることをご存知でしたか?

チョコレートは、「カカオ豆」を発酵させて作られます。この発酵の工程は、チョコレートの味を決めるとても重要な工程でもあるのです。

カカオの学術名である「Theobroma cacao(テオブロマ・カカオ)」は、ギリシア語で“神様の食べ物”という意味です。カカオ豆は、厚さ1cmほどの固い殻で覆われた「カカオポット」の中で、白い果肉に包まれています。この果肉を取り除くために、カカオ豆を果肉に包まれたままの状態で、バナナの葉に包み、発酵槽(発酵を行う木箱などの容器)に入れて4〜5日ほど発酵させます。すると、果肉が溶けてなくなり、私たちのよく知るカカオの種が出てくるというわけです。この発酵のプロセスは、果肉が溶けるだけでなく、果肉の成分がカカオ豆の成分と反応し、カカオ豆の渋みや苦みを減少させます。そして、カカオ独特の、まろやかな香りが引き出されるのです。

この発酵の工程で作用する菌は、何十種類もあると言われています。そのため、どんな菌がどの程度働くかのバランスによって、カカオ豆の味が変わります。酢酸菌が活発に働くと、酢酸(お酢)ができてチョコレートに爽やかな風味を与えてくれます。また、乳酸菌が活発だと、ヨーグルトのようなまろやかで優しい酸味が加わります。さらに、酵母が働いてアルコールが作られると、カカオ豆がもともと持つ成分とアルコールが反応して、違う風味の成分が作られます。

また、カカオを発酵させる時に生まれる高分子ポリフェノールには、抗酸化作用があります。抗酸化作用による効果は、血圧低下、抗がん・抗アレルギー作用、アンチエイジング、傷の治りを早くする、など、さまざまです。発酵させることにより、味わいや風味だけでなく栄養価も付加されるチョコレートですが、食べ過ぎには注意が必要です。