菌の物語
皆さん、「ジャコウネココーヒー」というコーヒーをご存じですか?「ジャコウネココーヒー」とは、コーヒーの実を食べたジャコウネコという動物の排泄物から採取したコーヒー豆のことです。このコーヒー豆は、そのおいしさと希少性から“世界一高いコーヒー”として知られています。別名「コピ(コーヒー)・ルアク(ジャコウネコ)」ともいいます。
バナナや魚、果物を主食とするジャコウネコにとって、コーヒーの実はおやつのようなもので、特に好んで食べるのだとか。食べた実の果肉部分は消化分解されますが、コーヒーになる種子部分は消化されず、そのまま糞として排泄されます。そして、その種子を採取・洗浄・乾燥・焙煎したコーヒー豆が「ジャコウネココーヒー」になるのです。
1匹のジャコウネコから1日にとれるコーヒー豆は、たった3g程度。1杯のコーヒーを飲むためには3日以上かかります。量が限られているのに加え、新鮮な糞から生豆を取り出し、洗浄して焙煎するまでに手間がかかります。しかも、糞をしてから2時間以上経ってしまうと、豆が茶色くなり、コーヒー豆としての価値がなくなってしまうのです。
興味深いことは、ジャコウネコが食べたコーヒーの実が、ジャコウネコの腸内で消化酵素や腸内細菌により発酵し、苦みが取れる上に香味が増し、完熟したコーヒーになる。という点です。その独特な風味と味わい深さにファンも多いのだとか。また、この腸内発酵により、カフェイン含有量は通常のコーヒーに比べておよそ半分に減ることもわかっています。「世界で最も高価なコーヒー」として知られるジャコウネココーヒー。日本では豆の状態で100g約5,000円〜1万円ほど。お店で飲む場合には、1杯8,000円程度とかなり高価ですが、どのような味わいなのか気になりますよね。