菌の物語

第9巻
第3話自律神経と腸内細菌

皆さんは体がだるい、心が重い、なんだかボーっとする、など、“原因不明の不調”が続いている”ということはありませんか?もし、このような症状があるなら、この原因は、自律神経の乱れからきているかもしれません。

自律神経は、脳の視床下部から全身に行き渡っている末梢神経のひとつで、私たちが意識して調整する意識してもできないことは、すべて自律神経が司っており、血行や消化吸収、体温調節などを24時間休むことなくコントロールしています。

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があり、交感神経は、心臓を動かす、血液を流す、栄養を吸収する、老廃物を回収する、など活動的に体を動かす車のアクセルのようなものです。反対に副交感神経は、体をリラックスさせるブレーキの役割があります。

交感神経と副交感神経は片方が活発なときは、もう片方の働きが抑えられるというバランスで働いており、昼間は交感神経が活発で、夜は副交感神経が活発という1日のリズムを持っているのです。しかし、ストレスが強い現代社会を生きる我々は、この交感神経と副交感神経のスイッチがうまく切り替わらず、交感神経優位の生活を送っている傾向が強くなっています。

自律神経は、年齢と共に老化することもわかっています。その原因は、「酸化」。自律神経を構成する神経細胞(ニューロン)は、一度傷つけられると二度と再生しません。ゆえに、年を負うごとに酸化ダメージが蓄積し続け、自律神経の機能も右肩下がりになるのです。

最近の研究では、腸内細菌の働きが良くなると、自律神経のバランスが整うことが明らかになってきました。反対に腸内環境が悪くなると、副交感神経の働きが下がり、自律神経のバランスが乱れます。腸と自律神経は密接な関係があります。腸を整えると自律神経も整っていくのです。最近では、病原菌だけでなく腸内に常在する細菌も脳の機能に影響を及ぼす、という研究が注目を集めており、「脳-腸-微生物相関」という言葉も提唱されています。

ネガティブな思考を払拭して、幸せな気持ちをもたらすと言われている、幸せホルモン「セロトニン」の8割が腸から出ているということもわかっていることなどから、腸を整えることが正常な神経を作ることにも繋がるのです。