菌の物語

第5巻
第7話世界最大のキノコ――アルミラリア・ブルボーサ

生物界は植物界、動物界そして菌界の三つに分類されています。菌界とはキノコを含む菌類の世界です。

生物界では菌は「分解者」として重要な役割を担っています。有限少量の無機物を分解還元することで、生物界の循環サイクルに大きく貢献しているのです。菌類がほとんど存在しなかった一億年前の白亜紀以前は動植物が分解されず、それで多くの化石が残っているのだと主張している研究者もいます。そしてその一部は石油や石炭となって、近代以降の文明の根幹を築くエネルギーとなっていますが、菌類が生息している現在となっては、もはやその資源が増えることはありません。

世界最大の生物はアメリカの森林で発見されたキノコ「アルミラリア・ブルボーサ」で15ヘクタール、およそ10トンとされていました。しかもその年齢は1500歳以上と判明しています。現在ではもっと巨大な生物が発見され、なんとその年齢は2400歳以上とされています。これは特殊な例で、多くの場合は数年が限度です。キノコは共生する植物との関係が密接で、樹木の生育状況によって寿命が左右されるためです。

とはいえ動物の場合は細胞分裂の回数の制限があり、どんなに条件を整えても限界があるのに対し、特殊とはいえ千年以上も生き延びる可能性のあるキノコには、驚きとともに崇敬に近い念を抱きます。