菌の物語

第3巻
第4話風の谷のナウシカ――菌類と浄化の話

1984年に公開され、ジブリ作品の中でも特にファンが多い「風の谷のナウシカ」。執行草舟推奨映画にも入っており、その映画評『見よ銀幕に』(戸嶋靖昌記念館刊)の中で「人類の涙が生み出した神話から生れた"実話"」と評しています。

時代は、巨大科学文明の崩壊から1000年の歳月が流れた頃。世界は猛毒の瘴気を撒き散らす「腐海」に覆われていました。そこには植物と菌類が繁茂し、巨大な蟲たちが棲みつき、人類は侵食する毒に怯えながらわずかに残る土地で静かに暮らしていました。

ナウシカは「風の谷」に暮らす族長の一人娘で、剣や飛行術に長けた勇士。そして、腐海との共存を考えており、秘密の地下室で毒を出さない腐海の植物を育てることに成功していました。巨大な力を秘める兵器を巡りトルメキア軍との戦乱に巻き込まれていく最中、ナウシカは腐海の森の深層部へと辿り着きます。本来ならマスク無しでは死に至るはずの森。しかしそこにはマスク不要で静けさと美しさが漂う「青き清浄の地」が広がっていました。

かつて人類が起こした戦争によって汚染された大地。その大地を菌類の力によって浄化するために、腐海は生まれたのです。そして、蟲たちは、大自然の浄化作用を守る「番人」だったのです。その腐海の秘密を知ったナウシカは、一筋の涙を流すのでした。

この「腐海」にも表されているように、「菌類」の浄化力は凄まじい力があります。40億年前に生命が誕生してから実に様々な生物が生まれてきましたが、もし、微生物をはじめとする「菌」がこの世にいなかったら一体どうなっていたでしょう。きっと40億年分の生物の死骸や排泄物、そして人間が作り出した様々な汚染物質で地球が覆い尽くされていたに違いありません。そうならないのは、菌が分解してくれているからです。地球がいつまでも美しくあるのはこの菌の浄化力のおかげなのです。

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