菌の物語

第3巻
第3話母から子へ受け継がれる菌

私たちの腸には、1000種類以上、総数で約1000兆個もの細菌が棲みついていると言われています。しかし、お母さんの子宮の中にいる胎児の腸内は、ほぼ無菌状態です。では、どのようにして、腸内細菌は赤ちゃんの腸に定着していくのでしょうか。

実は赤ちゃんが産道を通って産まれてくる時、その通り道には母親の体内に棲みつく腸内細菌が存在し、それが赤ちゃんの口や鼻から体内へと入り込むと考えられています。つまり、腸内細菌は、母から子へのプレゼントのようなものなのです。

赤ちゃんの腸内では、生後4日を過ぎる頃から母乳に含まれるオリゴ糖を餌にして、ビフィズス菌が増殖します。このビフィズス菌が出す「酢酸」という物質には、赤ちゃんの腸の細胞を丈夫にする働きがあることがわかっています。生後間もない赤ちゃんの腸は、このように腸内細菌に助けられ強くなっていきます。

しかし、腸内細菌は抗生物質の服用によって大量に死んでしまうことがわかっています。イギリスのある研究では、2歳までに抗生物質を与えられた子どもは、7歳半の時点で与えられていない子どもよりもぜん息の発症率が高くなることが示されました。この研究結果から、腸内細菌と小児アレルギーの関連性に注目が集まっています。

このように腸内細菌は、お母さんから受け継がれ、私たちが健やかに育っていく上でとても重要な存在なのですね。