菌の物語

第3巻
第1話アレルギーと闘う腸内細菌

先進国を中心に、ここ数十年でアレルギーの有病率は年々増加しています。特に、免疫機能が未熟な乳児では、食物アレルギーが多いと言われており、近年、保育園などでは、アレルギーを起こす可能性がある食物は極力食べさせない傾向があるようです。しかしアレルギー増加の背景には、生活環境や食習慣における過度の除菌が生み出す腸内細菌への悪影響があると考えられているのです。現代の過剰なまでの除菌・無菌思想の弊害として、このようなアレルギー問題が生み出されたのでしょう。

腸内細菌は、宿主の腸管の免疫機能の発達に重要な役割を果たすことから、食物アレルギーの発症に大きく影響すると考えられています。腸内細菌の中には、特定の種類の細菌が集まると、食物アレルギーの発症を抑える働きを持つものがいることが、最近の研究でわかっています。その為にも、腸内に多くの種類の腸内細菌が存在していることが重要になってきます。

健康な腸内細菌を育むためにも、幼い頃から少し身体に悪いと思われるものも含めて様々な食物を身体に入れる経験をしておくことが、健康な腸内細菌を育む土壌になるようです。

執行草舟も自著の中で、「離乳食を与えるようになったら、いろいろな食べ物を、それもなるべく本物のいいものを与えてやれば、その子供は経験として食べ物の良し悪しを自分で判断できるようになります」(『生命の理念Ⅰ』、講談社エディトリアル)と述べています。悪いものを排除するのではなく、それも含めて積極的に取り入れようとすることが大事なのでしょう。