菌の物語

第9巻
第8話ビタミンEの7000倍の抗酸化作用!
-「エルゴチオネイン」の秘密-

「エルゴチオネイン」とは、シイタケやヒラタケなどのキノコ類に多く含まれるアミノ酸の一種です。この成分は、キノコなどの菌類や一部の細菌しか生成できず、強い抗酸化作用を持っていることが特徴です。その抗酸化作用は、なんとビタミンEの約7000倍。
「抗酸化作用」とは、体内で発生した活性酸素を除去する働きのことで、現代の生活環境ではストレスや紫外線、喫煙、排気ガスなどによって、体内で過剰な活性酸素が発生しやすくなっています。過剰な活性酸素は細胞にダメージを与え、老化や疲労、生活習慣病を引き起こす原因にもなります。

エルゴチオネインは、そのような活性酸素を強力に除去する働きが認められており、肌のシミ・シワ・たるみ予防などの美肌効果のほか、生活習慣病予防、認知症予防、DNAの損傷や過酸化脂質の生成を防ぐ働きが期待されています。人体では腎臓、肝臓、眼の水晶体など酸化ストレスが強い部位に貯蔵されるほか、赤血球の中でヘモグロビンの酸化を防止しています。興味深いのは、老化と共に血中のエルゴチオネイン濃度が低下していき、さらに認知症患者の血中のエルゴチオネイン濃度が健常者に比べて非常に低いという研究報告があることです。さらに、スウェーデンでは平均年齢57歳の男女3,833名を対象に、21年間追跡調査した結果、エルゴチオネインの血中濃度が高い人は、心血管疾患リスクと死亡リスクが低かったということがわかりました。

このように、エルゴチオネインは健康長寿には欠かせない栄養素として現在も研究が進められています。しかし、私たち人間の体はエルゴチオネインを体内で生成することができないため、キノコ類から積極的に摂取する必要があります。皆さんも、良質な菌食(キノコや発酵食品等)をたっぷりとって、若々しさを保ちましょう!