菌の物語

第2巻
第2話日本語から見る腸

今でこそ、「腸と脳は繋がっている」という「腸脳相関」のことが話題にされたり、それに関する書籍も目にすることが一般的になってきました。この腸と脳の密接な関係について書かれた『腸と脳』(エムラン・メイヤー著、紀伊國屋書店刊)という本があり、執行草舟も読んで大変感銘を受けたと、皆様にお勧めしています。この本によると実は脳から腸への指令が全体の10%だとすると、腸から脳への指令は90%だと言われています。また健康や体質のみならず、性格や行動傾向、また喜怒哀楽などの感情も腸内細菌が深く関わっているということが数々の研究からわかってきました。既に皆様になじみが深いので改めてご紹介する必要はないのかもしれませんが、昔から日本では主に「意志」や「感情」を表わす表現として、「腹」をつかう言葉が多いということも、その現われの一つでしょう。例えば、
腹を据える
腹に収める
腹ができている
腹が立つ
腹の虫がおさまらない
腹をくくる
腹が太い
腹を割って話す
腹が黒い
腹をさぐる

など。一方、比較のために「頭」を使う 表現には、
頭を悩ます
頭が良い
頭が上がらない
頭が古い

など、頭を使った表現は「意志」や「感情」というよりは、表面的で機能的のような表現に感じます。実は肚に心や魂が宿るとする見方は日本には古くからあり、「腸内細菌」を知らずとも、それが、性格や意志に深く関係しているということをわかっていたと感じざるを得ません。