メガヘルス通信
「赤ちゃんはビニール袋をワシャワシャする音が好き」という話を聞いたことがありますか?これは母親向けの情報メディアでよく書かれていることです。きっと、当てはまる赤ちゃんが多いのでしょう。
ある日、写真館に記念写真を撮りに行ったところ、そこのスタッフさんは赤子を笑わせようとビニール袋をワシャワシャと鳴らしてくれました。しかし我が息子、完全に無反応、真顔です。するとスタッフさん、赤ちゃんがこれを好きでないはずはないと言わんばかりの勢いで、息子の耳元でワシャワシャを加速させました。結果はというと、真顔が継続するばかり。私の方が、「あれ、我が子は音に興味がないのかな?」と心配になるほどでした。
そんな息子ですが、母の心配をよそに、家に帰るとグレン・グールドのピアノソナタを聴いてバタバタと手足を動かし、満面の笑みでリズムを刻み始めました。そうです、ワシャワシャ音には興味がなかっただけで、自らの魂が震える音楽を聴けば自然と体が動き、笑顔になるのです。思えば、グレン・グールドは、私の父であり息子にとっては祖父である執行草舟が若かりし頃に直接会い、音楽論を交わした深いご縁のある音楽家。私も大好きなピアニストです。祖父と母の魂を震わせた音楽は、三代目の赤子の心にもすでに刻印されていたようです。
このご時世で母親業をよちよち歩きで始めた人の多くが躓く小石、それが「情報」です。私も育児本を読んで不安な気持ちが和らぎ、参考になった部分があったことも事実なのですが、全く参考にならなかった部分が多々あったということもまた事実です。この「赤ちゃんはビニール袋をワシャワシャする音が好き」という情報もその一つでした。
「赤ちゃん」という知っているようで知らない生き物を前にして、ついつい頼ってしまうのがネットやテレビ、雑誌の情報。不安な気持ちを払拭するという点ではメディアは有用ですが、そもそもメディアというのは「大衆」に向けられているので、その本質的に、一人間には寄り添っていません。ある情報がメディアを通して世に出てくる場合は適合する人が多いと判断されたものの抽出であり、しかもその判断にも仕掛け人の意図が絡んでいるということを忘れないようにしたいものです。
赤子と対峙していて強烈に伝わってくるのが、生まれる瞬間-むしろ胎内に居る頃から、彼らの魂にはすでに彼らを精神的な人間たらしめている強烈な刻印があるということです。それは、他者がどうであろうと自分は自分であるという刻印で、環境や教育によって装飾することはできても変えることのできない部分なのだと感じます。すでに赤ちゃんたちは「個としての人間」を歩み始めているのですから、大人も様々な情報に惑わされず、彼らの個を見て魂そのものの刻印を読み解くような関わり方をしていきたいものです。私も、まずは目の前の我が子との魂の交流から得られた楽しさを、メガヘルス通信を通して皆様にお伝えしていけたらと思っています。