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メガヘルス通信

2020/06/01Vol.22 お祝い着と新しい時代の予感

息子のお祝い着

 前回の記事では、お宮参りで赤ちゃんはお祝い着の一つ身着物を着けるのが習わしであるというお話をしました。今回は、息子のお祝い着のエピソードについてお話ししたいと思います。
 ご自身や知人の方のお宮参りで、赤ちゃんが黒や赤色のお祝い着を掛けられている姿をご覧になったことのある方はきっと多いでしょう。男の子は黒や青色、女の子は赤や桃色の華やかな柄の一つ身が多い傾向にあります。一つ身の着物というのは赤ちゃんの頃しか着られない寸法で、年齢で言えば0~3歳位までのものと言われていますから、お宮参りでしか着ないのであればレンタルでも十分。お祝いの気持ちが一番重要なのです。
 とはいえ、我が家は早くから胎児の性別がわかっていて準備期間がとれたこともあり、赤子の祖父である執行草舟が京都の染色家の方に一つ身のお誂えを頼んでくれました。ありがたいことです。
 そうして出来上がったお祝い着がこちら(写真)。昨年の記事「大伴旅人の涙」でも触れましたが、大伴旅人は執行家の先祖に当たり、また息子の生まれ年である令和元年の元号の由来にも関わる人物です。その背景に因んで、お祝い着には日本画家・安田靫彦がその大伴旅人を描いた「持節大将軍」という作品の模写を背面に配し、旅人の屋敷に見事に咲いていたという梅の花と、金彩に輝く緋色の太陽とで囲むようにして描いて頂きました。梅の花は吉祥柄であるだけでなく、令和の時代の象徴でもあります。そして、旅人を照らす緋色の太陽には人知を超えた全く新しい時代の到来を感じさせる趣さえあるのです。
 令和の時代に生まれ、全く新しい時代を生きる子供たちは、昭和や平成が含有していた「これまでの時代の延長」を感じられた我々親世代以前の人間とは隔絶した体験をするのかもしれない、と感じています。すでに人間絶対中心時代との断絶が始まっているのです。人間らしく生きようとすればするほど、これまでの時代の模倣でナアナアに生きていくことはできなくなるでしょう。
 お祝い着の制作に当たった染色家の方は、本当に直前までどう描くかを悩んで悩んで描いて下さったそうです。そして彼女がついにお宮参りの前日の夜に届けて下さったお祝い着には、旅人を照らす太陽の光が、十字架のように走っていました。十字架の光に向かう旅人-そう、時代が人間を必要としなくなっていくときに、それでも生命の炎を燃やし続ける存在であるためには、人間の矮小性から脱していかなくてはならないのです。新時代を生きる息子に、先祖と繋がる確かな足場を持ちながらも人間を超越したものへ向かう勇気を持ってもらいたい。このお祝い着にはそんな祈りが込められています。きっとそうなってくれるだろうという希望に満ちた気持ちで、私自身も子供と関わっていきたいと思っています。

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