菌の物語

第4巻
第2話デブ菌・痩せ菌?

ここ数年話題の腸内フローラ。腸内には、1000兆個もの腸内細菌がいると言われ、その重さは約1㎏にもなります。菌たちは、腸の中でも自分の住みやすい環境を見つけ、集団で生活しています。腸内細菌は、ビフィズス菌、乳酸菌でおなじみの「善玉菌」、バクテロイデス、大腸菌、連鎖球菌などの「日和見菌(ひよりみきん)」、ブドウ菌、ウェルシュ菌、大腸菌等(有毒株)の「悪玉菌」に分類され、その種類は1000種以上ともいわれています。善玉菌代表の「乳酸菌」だけでも現在279菌種見つかっていますが、まだまだ発見されていない未知の菌も沢山いるのです。

加齢とともに善玉菌の数は減り、悪玉菌が増えていく傾向があります。「老化は腸から」とも言えるでしょう。一般的に、悪玉菌は病気を引き起こすとされ、嫌われがちですが、実はその悪玉菌の中には、免疫力をものすごく高めてくれたり、バランス次第で神経の安定を保ってくれる菌もいることをご存知ですか?今までは、「2:1:7 (善玉:悪玉:日和見)」で、善玉菌が悪玉菌を抑えているのが健康的な状態といわれていました。しかし、これまで善玉菌とされていたものの中にも働きの悪い菌がいたり、逆に悪玉菌や日和見菌の中に良い働きをする菌がいたりすることが分かってきています。

一概に、“乳酸菌だから善玉”、“クロストリジウムだから悪玉”とは分けられなくなってきたのです。そもそもが、腸内細菌を勧善懲悪劇のように「善」「悪」に分けること自体、難しいのです。私たちの知らないところで、1000兆もの腸内細菌たちは微妙な関係を保ちながらその生態系を保っています。そして、ある時には人体に有害な作用をもたらしたかと思えば、別の場面では有益な働きをする。腸内細菌はそういうものだと認識しておく必要があり、そして何よりも、バランスが大切なのです。

最近では、ダイエットには「デブ菌(ファーミキューテス)」「痩せ菌(バクテロイデス)」が関係している、と話題になり、“脂肪を排泄する働きのある、痩せ菌を増やそう!”反対に、“デブ菌を減らそう!”などと謳うサプリなども販売されています。しかし、デブ菌、痩せ菌と言って、特定の菌をもてはやしたり、集中攻撃して良いのでしょうか。

人によって理想の腸内フローラ構成も異なり、様々な生存競争が腸内で繰り広げられた結果、各々に最も適したタイプの腸内細菌だけが腸内に生き残っていくのです。それは、その人が生きてきた年数をかけて培ってきたものです。人によって腸内フローラの構成は違い、菌自らがバランスを見て動きを調整してくれています。菌が自然にバランスをとってくれているのに、私たちが「頭」で考え、不自然に歪めてしまうと、逆に病気を引き起こす原因ともなります。

真にバランスの良い腸内環境であれば、いま本当に体に必要なものがわかります。腸内細菌たちが私たちの体に何が必要かを教えてくれているのです。私たちはその声に耳を傾けるだけで良いのです。