菌の物語

第4巻
第3話人間を生かす鍵 ―― 酵素って何?

弊社商品「サンレム」は椎茸菌糸体由来の加工食品で、椎茸菌糸体の抽出物に「酵素効果」があります。弊社社長 執行草舟は、長年の研究結果に基づき「生体内の酵素反応は、言いかえれば生命エネルギー反応とも言える。サンレムは、口から入る段階で既に、腸内で酵素としてすぐに活用できる状態に加工することにより、消化係数を極めて高い状態にしている」さらに、「菌とその酵素をたくさん摂ることによって人間の底力をつくる“気概”が生まれてくる」『風の彼方へ―禅と武士道の生き方―』PHP研究所)と記しています。

そもそもこの「酵素」とは何ものなのでしょうか。実は私たち人間は、「酵素」がなければ一瞬たりとも生きてはいけません。呼吸をするのも、心臓を動かすのも、食べたものを分解するのも、この「酵素」が大きく関わっているのです。 古くから発酵や食物の消化を通して認識されていた「酵素」ですが、その実態を解明する科学的研究が始まったのは、わずか150年ほど前のことで、それまでその実体は謎に包まれていました。人間だけでなく植物も、動物も、単細胞生物である微生物たちも、生命の営みには必ず「酵素」が関与しています。もし酵素がなかったら、植物は光合成をやめ、地球上はゴミだらけになってしまうでしょう。

人の健康に関わる酵素は大きく「消化酵素」「代謝酵素」「食物酵素」の3つがあります。「消化酵素」は読んで字のごとく、食べたものを分解し、吸収しやすいようにします。栄養素として食べ物が体を巡るには最小単位までバラバラにしなければなりません。添加物によって現代では消化するだけでも胃も腸も一苦労です。

そして「代謝酵素」は、呼吸、思考、記憶、体を動かすなどの全身の生命活動を司ります。この代謝酵素は消化酵素と密接につながっていて、消化が優先されるので大食などをすると、代謝酵素が消化に回されます。食べ過ぎると眠くなるのも代謝が落ちてしまうからなのです。

この消化・代謝酵素はおよそ5,000種類の体内酵素が潜在的に存在しているといわれています。例えば、唾液の中に含まれる消化酵素の「α-アミラーゼ」は炭水化物だけしか消化せず、たんぱく質や脂肪の消化には役立ちません。肝臓の中にある「アルコールデヒドロゲナーゼ」はアルコールにだけ働きます。これは“鍵と鍵穴”のように、酵素が触媒する反応は1つだけであり、異なった反応には別の酵素が必要で、決して“代役”を許さないのです。

三つ目の「食物酵素」は、食べ物から取り入れる酵素のことをいいます。生の果物や野菜、そして発酵食品に含まれ、血液を循環させて消化を促進します。発酵食品、生の肉や魚、野菜、果物などに多く含まれていますが、酵素は熱に弱く48度以上に加熱するとその働きが半減するといわれています。「生で食べる」「ジュースにする」という酵素の採り入れ方もありますが、これは体を冷やしかねません。ところが「発酵食品」は代謝を高めて体を温める働きがあり、かつ多くの酵素を含んでいます。発酵食の酵素によって有益な代謝物が豊富に生成され、腸内細菌のエサとなり、腸内フローラを適正に保ってくれるのです。

とはいえ酵素自体は生き物ではありません。自分自身は変化することなく触媒作用を担い、分解や反応などをスムーズに行えるよう促すものですが、酵素がある場合とない場合では、反応の速度に大きな違いがあります。生体内の化学反応は酵素がなくても起こり得ますが、酵素があれば無い場合の何百万倍も何千万倍もの働きになるのです。目には見えない菌や酵素は私たちの生命を支え、地球環境を守る“黒子”であり、エネルギーを作り出す“鍵”なのです。