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この度、大著の『未知よりの薔薇』全八巻(勉誠出版)を上梓した竹本忠雄氏による、4月23日の講演会「歴史とヴィジョン—『未知よりの薔薇』を書き終えて」(於 一般社団法人 倫理研究所)を記念し、氏の20歳代に書いた詩作や芸術に関するノート三冊を一つにまとめた『千曲川のほとりにて』が、発表・刊行(書店普及は4月末予定)されます。同著は希少なエッセイ・詩集の形式で、詩を胸に生きる文学青年の心情が吐露された、現代においてはもはや神話的とも言える「青春」の懊悩が綴られたドキュメントです。夢を手放さないで社会で生きていくとはどういうことか、詩を創作するとはいかなる意味があるのか、青年の真摯な問いかけが私たちの胸に響いてきます。
竹本氏は、『未知よりの薔薇』を書き上げたことをきっかけに自らの過去 -出発点-を遡り、作品の始まりと終わりの意味を探し求め、実験的な思考を重ねていたその折に、当時の詩作ノートを発見。読み返す中で、当時も今も追い求めるものは同じであったことを見出します。あたかもプルーストが『失われし時を求めて』の後に、『見いだされし時』を書いたように――。
全編に美しい言葉が散りばめられた、芸術的な作品となっており、現実世界に詩人の魂を持って生きるとはいかなることであるかが描かれています。作中には、現在は絶版となり入手困難な詩集 『CONCERTO』(思潮社)にも収められていた、氏が20代の頃に書いた珠玉の詩も12篇収録。詩ができあがるまでの青春の悩みとともに、その創作行為の過程を辿ることのできる一冊です。
「『未知よりの薔薇』の先で待つものは、時間を一回転して、我が青春譜であった。」――『千曲川のほとりにて』自序より
更に、『千曲川のほとりにて』にて初公開!竹本忠雄氏が20歳の時に書いた処女作詩「春堤」も掲載されています。あたかもランボーの「サンサシオン」を彷彿とさせるような、自由で瑞々しい一作です。帯にも引用された箇所を抜粋してご紹介。
河よ ひとすぢに白く光りて なれは地平のはてに消ゆるかに見ゆ 白く光るその水面を見ゆれば まこと わが愁ひは消えて果つるや ――本書初公開 処女作詩「春堤」より
巻末には、「失われた詩人を求めて」と題して、若き詩人の足跡をたどったエッセイを、執行草舟コレクション/戸嶋靖昌記念館 主席学芸員 安倍三﨑が寄せています。
執行草舟推薦帯文:
「若き詩人の、この憧れを見よ!著者のもつポエジーは、現代の日本を撃つだろう。魂の清純が、震えている。」 ――― 執行草舟
著者プロフィール:
竹本忠雄(1932- )。文芸評論家。東西文化交流を主軸に多年、日仏両国間で創造的活動に従事。特にA・マルローと霊性的日本との契り、皇后美智子さまの御歌の仏訳紹介で深層の相互理解に資した。代表作『マルローとの対話』、『皇后宮 美智子さま 祈りの御歌』、『パリ憂国忌』、『ノストラダムス・コード』、詩集『CONCERTO』のほか、自伝的文学作品『未知よりの薔薇』全八巻を勉誠出版より令和三年に刊行した。かたわら、目に余る外地の反日メディアに対して、日本文化防衛線を提唱し、単身、半生にわたって第一線で活躍した。
【目次】
千曲川のほとりにて(竹本忠雄)
ノートⅠ 千曲川のほとりにて
ノートⅡ 詩作十年
ノートⅢ 詩作のための断章
失われし詩人を求めて―― 寄稿:安倍三﨑
寄稿者プロフィール:
安倍三﨑(1980- )
東京外国語大学スペイン語学科 言語学コース修了。サラマンカ大学にてスペイン語認定証最上級D.E.L.E. superior取得。現在、執行草舟コレクション/戸嶋靖昌記念館 主席学芸員。訳書に日本・スペイン外交関係樹立150周年/サラマンカ大学創立800周年記念出版『ベラスケスのキリスト』(ミゲール・デ・ウナムーノ著、監訳 執行草舟、法政大学出版局)