菌の物語

第2巻
第6話うつ病と腸内細菌

世界保健機構(WHO)によると、世界のうつ病患者数は3億人に上り、患者の心身の健康状態と関連があると分かっています。近年、メディアでも多数取りあげられ、日常的に話題に上ぼるようになってしまったうつ病ですが、どうやら我々の体内にいる腸内細菌と大きな関わりがあることが近年わかってきました。

ある研究によると、うつ病患者と健常者を対象に、被験者の便を採取して、ビフィズス菌と乳酸桿菌(ラクトバチルス)の菌量を測定したところ、うつ病患者は健常者と比較して、先述した菌の数に低下傾向が見られました。

例えばビフィズス菌の菌量は、健常者と比べるとおよそ3分の1となり、うつ病発症のリスクが3倍に上昇することがわかりました。うつ病には、脳内伝達物質が関わっていると言われていますが、その伝達物質の合成には多くのビタミンが関わっています。それらのビタミンを腸内細菌が合成しているのです。したがって、腸内細菌が不足すると脳内伝達物質が欠乏し、イライラしたりうつ気味になってくるのです。

人間にやる気を起こさせるドーパミンや、脳内の幸せ物質と呼ばれるセロトニンも腸内で合成されることがわかっています。我々の精神は、腸内細菌によって大きく左右されているのです。