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2024.12.14

菌の贈り物

菌たちは貧しくて、今年のクリスマスはよし子ちゃんに何もプレゼントを買ってあげられなかった。最近、よし子ちゃんは「菌食」を始めてくれたというのに・・・。菌たちは、たらふく美味しい食事にありついた。よし子ちゃんの腸のふかふかのベットに寝っ転がってまどろむ。今年は何もお返しできない・・・・ 。うーん。代わりによし子ちゃんの血をさらさらにすべく、地味に毎日オールを濃いで血流を助けよう!

翌年のクリスマスがきた。今晩は太郎くんとデート。はりきってお化粧をするよし子ちゃん。ふと気づくと何だか顔色が明るく、トーンも上がってお化粧ノリもいいみたい。そういえば毎年冬は手先が冷たくって、すごく血色も悪かったのに、今年は頬に薔薇の花が咲いている。ディナーのろうそく越しに光り輝くよし子ちゃんの笑顔に、太郎くんの眼は釘づけだった。

続いて菌たちはよし子ちゃんのどうしても止められない習慣に注目した。そう、毎晩、寝る前に甘いものを食べてしまうのだ。チョコレートにアイス、バームクーヘンに豆大福。ときには生クリームこってりのケーキにまで手が伸びる。寝る前なんて、いけない。わかっているのに—。しゅくしゅくと菌たちは、よし子ちゃんの食べる物の整理整頓・棚おろしをしていった。

菌たちは働けどもいっこうにお金持ちにはならない。けれど、よし子ちゃんのことを内側から助け続けた。3年も経つとよし子ちゃんの体は、細胞一つ一つがいれかわってプルンプルンに。いつだって菌たちが細胞にハッパをかけて刺激していた。あっと言う間に7年も経つと、よし子ちゃんは骨の髄まで入れ替わって、すっかり強い女性に・・・ 。その年のクリスマス。よし子ちゃんは太郎くんを置いて一人旅に出た。菌たちは目に見えないけれど、素敵な贈りもの — 燃える生命 — をくれたのだ。よし子ちゃんは新天地に一歩、踏み出した。